実施件数サマリー
| 特定行為の種類 | 実施件数 |
|---|---|
| 侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 0件 |
| 非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | 1件 |
| 気管カニューレの交換 | 1件 |
| 胃ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 | 1件 |
| 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 | 4名 |
| 脱水症状に対する輸液による補正 | 4名 |
― 在宅での褥瘡管理と段階的な壊死組織除去 ―
アキュリア訪問看護ステーションでは、特定行為研修を修了した看護師が、医師の手順書・指示のもと、患者様の状態を評価しながら在宅で必要な医療処置を行っています。
2026年9月は、褥瘡に対する壊死組織除去を3件実施しました。
今月は、その中から、壊死組織を伴う背部褥瘡に対して段階的にデブリードマンを行い、その後、創床形成が進んだ症例をご紹介します。
※個人が特定されないよう、症例の一部を加工して掲載しています。
壊死組織を伴う背部褥瘡
今回の症例では、背部に褥瘡を認め、創面には黒色壊死組織およびスラフが付着していました。
9月初旬には、創中心部に黒色壊死組織を認め、創傷治癒を妨げる要因となっていると判断しました。
一方で、在宅での創傷管理では、
「壊死組織があるから、すべて除去する」
という判断をするわけではありません。
創部だけではなく、出血リスク、疼痛、循環状態、感染徴候、栄養状態、体位保持能力などを総合的に評価し、安全に除去できる範囲を判断することが重要です。
9月3日 初回デブリードマン
創中心部には黒色壊死組織を認めていました。



9月3日 デブリードマン前:創中心部に黒色壊死組織が固着している
デブリードマン実施手順書に基づき、患者様の状態が手順書の範囲内であることを確認したうえで、約2.5cm×2.0cmの黒色壊死組織を除去しました。
処置中は血圧低下や意識状態、疼痛などを確認しながら進めましたが、明らかな出血や強い疼痛は認めませんでした。
9月3日 デブリードマン後:黒色壊死組織を除去し、創底が露出した状態
処置後は創部の状態を医師へ報告し、特定行為による専門的な創傷管理を継続する方針となりました。
「一度ですべて取らない」という判断
初回のデブリードマン後も、創床には壊死組織やスラフが残存していました。
しかし、深部には血管などの重要組織が存在する可能性があります。
そのため、無理に壊死組織を除去するのではなく、
- 壊死組織を軟化させる
- 健常組織との境界を明確にする
- 安全に除去できる部分を判断する
- 必要な部分だけ除去する
という方法で、段階的に創傷管理を行いました。
9月10日には、壊死組織の軟化が進み、健常組織との境界が明瞭となったため、除去可能な範囲について再度壊死組織除去を実施しました。
一方、6~8時方向には深部へ連続する壊死組織が残存しており、12時方向には別の潰瘍との内部交通も疑われたため、無理な探索や切除は行いませんでした。
9月11日 創床を守りながら追加処置
翌日の評価では、融解したスラフと健常組織との境界がさらに明瞭となっていました。
そこで、剪刀と有鉤鑷子を使用して、除去可能となった壊死組織を追加で除去しました。
デブリードマン後には新鮮な肉芽組織も確認できました。
一方、処置時に疼痛があったため、「除去できるから取る」のではなく、必要最小限にとどめる判断をしています。
創周囲には帯状疱疹による炎症も残存していたため、感染管理を優先しながら局所処置を継続しました。
TIMEを用いた継続的な創傷評価
当ステーションでは、褥瘡の状態を単に「良くなった・悪くなった」だけでは評価せず、TIMEの考え方を用いて評価しています。
- T:Tissue(組織)
壊死組織やスラフの量、肉芽形成の状態を確認します。 - I:Infection / Inflammation(感染・炎症)
発赤・腫脹・熱感・疼痛・悪臭・浸出液などから感染や炎症を評価します。 - M:Moisture(湿潤)
浸出液量や創面の乾燥、周囲皮膚の浸軟などを確認し、適切な湿潤環境を整えます。 - E:Edge(創縁)
創縁の状態、ポケット、創の拡大、深部への交通などを確認します。
デブリードマンをした日だけではなく、その後の創部変化を継続的に評価することも重要な役割です。
創傷は徐々に増殖期へ
月初には黒色壊死組織が存在し、創床形成が進みにくい状態でした。
9月22日にはバイオフィルム形成に対して鋭匙によるメンテナンスデブリードマンを実施し、壊死組織の軟化、分離、創床の状態を継続して評価しました。


9月中旬からの創部の変化(左から時系列順):スラフが徐々に減少し、創底の肉芽が見えはじめている
そして月末には、創床の50%以上を赤色の健常肉芽が占める状態まで改善しています。
感染の進行を疑う新たな発赤、腫脹、熱感、悪臭なども認めず、創傷治癒過程は炎症期から増殖期へ移行していると評価しました。
9月30日 再度のデブリードマン
月末の評価では、残存していた壊死組織の軟化・分離が進み、健常組織との境界が明瞭となっていました。
そこで、手順書の範囲内であることを改めて確認したうえで、再度デブリードマンを実施し、残存していた壊死組織を除去しました。


9月30日 再デブリードマン後:壊死組織を除去し、創底の肉芽が確認できる状態
再デブリードマン後は、露出した創底に肉芽形成がさらに進んでいます。
再デブリードマン後:肉芽形成が進んできた様子
DESIGN-Rによる評価
創傷の変化は、DESIGN-Rでも継続的に評価しています。
9月3日の背部褥瘡は、壊死組織や感染徴候、ポケットなどを含め、DESIGN-R 26点でした。
その後、壊死組織除去、洗浄、外用剤、除圧、栄養・全身状態の管理を継続。
9月30日の再デブリードマン後には、DESIGN-R 10点となっています。
| 評価日 | DESIGN-R |
|---|---|
| 9月3日 | 26点 |
| 9月30日 | 10点 |
と、創部の状態にも大きな変化がみられました。
※DESIGN-Rの点数のみで治癒を判断するものではなく、創部所見や全身状態を含めて総合的に評価しています。
在宅でのデブリードマンで大切にしていること
特定行為として壊死組織除去を行う目的は、単に「壊死組織を切除すること」ではありません。
私たちが大切にしているのは、
- 評価する
- 必要性を判断する
- 安全な範囲で介入する
- 経過を見る
- 再評価する
という一連の過程です。
特に在宅では、患者様の全身状態や生活環境、ご家族・介護者によるケアの継続性なども考慮する必要があります。
時には、「今日は切らない」ことも重要な臨床判断です。
まとめ
2026年9月は、特定行為として褥瘡に対する壊死組織除去を4件実施しました。
今回の症例では、一度にすべての壊死組織を除去するのではなく、感染・出血・疼痛などのリスクを評価しながら段階的に処置を進めました。
その後もTIME・DESIGN-Rを用いた継続評価、洗浄、外用剤、除圧、栄養状態を含めた全身管理を行うことで、創床には健常肉芽が形成され、治癒過程の進行を確認することができました。
アキュリア訪問看護ステーションでは、今後も医師・医療機関と連携しながら、「病院でなければできない」を少しでも減らし、住み慣れた場所で必要な医療を受けられる体制づくりに取り組んでまいります。
医療と在宅の架け橋に。
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